2023/01/06 20:09


1.ガラ紡(がらぼう)とは?


「ガラ紡績機」通称ガラ紡は、明治初期に開発された昔ながらの紡績機です。現存するのは全国で2、3台のみで、今やほとんど使われることもないのだとか。現在では博物館に収容されるほど貴重になり、まさに「幻の技術」といった表現がぴったりの存在に。


日本独自の大変優れた技術ではありますが、糸を作るには非常に手間と時間を要することから、大量生産には不向きとされます。西洋紡績の台頭とともに衰退し、いつしか姿を消していったのです。



2.繊細な職人の技、ガラ紡の仕組み

ガラ紡の仕組みは、実はとても単純。回転する円筒形の入れ物に原綿を詰め、そこから綿を引き出すと撚りが加わることで、糸が作られるというものです。ガラ紡という名前は、これらの金属の筒が稼働時にたてる、ガラガラという音が由来に。綿を少しづつ引き出して撚りをかけていく工程は、手紡ぎと非常に近いといえます。


機械とはいうものの、熟練の職人の経験によるものが大きく、手仕事のように繊細な技術が不可欠です。糸の太さや張りの調整に細心の注意を払う必要があるため、職人は常に目が離せない状態なのだとか。ゆっくりと紡がれた糸には不揃いな凹凸が生まれ、味わいのある、まるで手紡ぎのような表情に仕上がります。




3.ガラ紡の特徴と苦労を上回る魅力

ガラ紡が紡ぎ出す糸には、大きな特徴があります。全体的に撚りが甘く、所々太くなったり凸凹があったりと、とても不均衡であること。また、触れた時のふんわりとした柔らかな感触も、現代の整った糸にはない特徴といえるでしょう。昔ながらの製法により、他では見ることのできない、糸の味わいや表情が生まれます。


ゆっくりとした速度で稼働するガラ紡は、一般的な高速紡績機では弾かれてしまう短い繊維「落ち綿」を使うのに適しています。GAUNTOUCHで使用されるのは、2~3年農薬や化学肥料を使わずに育てられた、JOCA認定のオーガニックコットンが100%。そして、その一部には落ち綿も含まれます。落ち綿が使用されるGAUNTOUCHのニットにとって、ガラ紡はなくてはならないものといえますね。

貴重な資源をけっして無駄にせず、本来ならば棄てられてしまうはずの素材にも生命を吹き込める技術──エコでていねいなものづくりであることが伺えます。


古くから変わらない製法を用いて、じっくりと時間を掛けて紡ぎ出す個性豊かな糸。

ガラ紡での糸作りやその糸を使用した製品作りは、効率や生産性とはかけ離れているのかも知れません。それでも守ろうと思えるのは、苦労を上回る魅力があるからなのです。




4.貴重な日本独自の技術、ガラ紡は誰が作った?

日本独自の紡績機であるガラ紡は、西洋式紡績機と並ぶ画期的な発明として知られる存在です。現存しているものも少なく、大変希少で今や幻ともいえる技術に。このガラ紡、いったい誰が開発し、どのような歴史をたどったのかをご紹介します。


●長年構想をあたためた末、ガラ紡を発明

ガラ紡の発明者は、臥雲辰致(がうんたっち)という、現在の長野県安曇野市出身の人物です。

生家は足袋底を作る製織業を営んでいたことから、辰致は幼少の頃から紡績機械の開発を思い描いていたのだそう。20歳で出家して僧となりますが、明治4年、30歳の時に廃仏毀釈に巻き込まれ、僧を辞すといった珍しい経歴の持ち主でもあります。このことをきっかけに、再び紡績機械の開発に取り組んだ末、明治6年ガラ紡の開発に至ります。


●ガラ紡のたどった歴史と功績

明治10年の「第一回内国勧業博覧会」において、最高位の鳳紋賞牌を受賞したガラ紡。優れた発明と認められたことで、その後は愛知県の三河地方を中心に、急速に広まっていきます。そして、ガラ紡を使った紡績業は、一大地場産業として発展するまでになったのです。


明治中期になり、生産効率が良く、均一な糸が作れる西洋式紡績機が入ってくるまでは、日本独自の「和紡績」としてガラ紡は重宝されてきました。手で糸を紡ぐしか方法がなかった頃に、機械による紡績技術が取り入れられたのは、当時としては大変画期的だったはず。

ガラ紡が日本の繊維技術に与えた影響は、計り知れない大きなものだったに違いありません。


5.独自のニットを生み出すブランド、GAUNTOUCH

GAUNTOUCHは、独創的なニットウエアを展開するブランド。大きな特徴はガラ紡の糸を使っていることで、ブランド名は、ガラ紡の発明者である臥雲辰致氏の名前が由来になっています。

太さもまちまちなガラ紡の糸はとても扱いづらく、商業用の編み機で編み立てるのは至難の技。実は、ガラ紡の糸でニットウェアを作るブランドは、とても珍しいのです。

大量生産では出すことのできないあたたかみは、そんな効率や生産性度外視の作業があってこそ生まれるもの。

ガラ紡の糸ならではの、自然体で包み込むようなやさしさは、GAUNTOUCHの何物にも代え難い魅力になっています。


ガラ紡がすっかり希少な存在となり、完璧に整った美しい糸が当たり前になった昨今。ガラ紡が生み出す独自の風合いが、他にはない良さとして再認識されつつあります。

ニットを通して、先人が残した伝統の技術に触れることのできる機会。GAUNTOUCHはそんな貴重な体験を、皆様に届ける役目を担っていると考えます。




6.ていねいな手仕事の賜物、GAUNTOUCHのニット

希少なガラ紡で作られた糸を、ゆっくりと慈しむように編み立てたGAUNTOUCHのニット。不均衡な凹凸のある糸が生み出す表情からは、飾らない素朴な風合いが感じられます。

このポコポコとした起伏こそがガラ紡の糸の特色であり、GAUNTOUCHの唯一無二の味わい。たっぷりと空気を含んだニットは見た目よりもずっと軽やかで、ふんわりとあたたかな着心地です。

綿100%のニットなので、冬場の静電気が気になる方や、お肌の弱い方でも安心して着ていただけますよ。


クラフト感溢れる佇まいや思わずホッとするやさしい手ざわりは、古くから変わらない、ていねいな手仕事の賜物。手に取って触れるだけで、自然と良さが伝わってくるニットだと思います。


「冬のお出かけも私らしく」GAUNTOUCH クルーネックニット


ずっと愛せる定番のナチュラルカラー

お色味は、素材そのものの自然な色を活かした生成色。何にも染まらないプレーンなイメージで、ガラ紡の糸のナチュラルな質感を最も感じていただけます。様々なファッションや色味に合わせられて、イメージも作れる。まさに万能のカラー。

ガラ紡のニットの魅力とは?

起伏のある糸が空気を含むことで、ふわっと柔らかな肌当たりになります。ポコポコとした凹凸のある表情が印象的で、着ていて温かいのはもちろん、ホッとする心地良さと安心感を味わっていただけます。

柔らかでやさしい肌当たりに加えて、500~700gととても軽量。だからインナーにするのもおすすめの着方です。冬はインナーとして着た上に重ね着を、さらに、少し暖かい季節には素肌に近い状態でふんわりと一枚着ていただくと、心地良さは極上に。

肌への優しさと着心地を求めて
オーガニックコットン100%のコットンニット

糸になる素材には、2~3年農薬や化学肥料を使わずに育てられた、JOCA認定のオーガニックコットンを使用しています。その一部には、繊維が短いために、一般的な高速紡績機では糸にすることができなかった落ち綿も含まれます。

低速で稼働するガラ紡は落ち綿を紡ぎ直すのに都合が良く、有効利用が叶うのです。本来捨てられるはずの素材に、新たに生命を吹き込めることから、環境に配慮されていると言っても良いのでしょう。

無駄を省いたシンプルなデザインだからこそ引き立つ、素材ならではの素朴な味わい。自然体で気負わない佇まいが、GAUNTOUCHのニットの何よりも魅力です。時間の経過や物との関わり方による変化が現れやすく、身の周りで完結できるような物。さらに、それをふと振り返って見た時に、感慨深い何かを見つけられる物。それがGAUNTOUCHのニットなのではないかと思います。そのような存在であって欲しいという願いかも知れません。愛着を持ってひとつのものと付き合い続ける体験をお届けすることが、GAUNTOUCHのニットの使命のようなものだと考えます。